横浜市の日産グローバル本社ギャラリーでは、2018年8月21日から11月27日までの予定で、特別展示イベント「世界に挑め。日産グローバルモータースポーツ60年~ 60 years of NISSAN International Motorsport~」を開催している。
日産が海外でのモータースポーツ活動を始めてから60年となるのを記念して、ヘリテージカーの中から代表的な競技車両14台が2台ずつ7回に分けて展示される。
今回は9月18日から10月1日まで展示されている、パルサーGTI-Rのラリーカーを紹介する。
パルサーGTI-R 1992年RACラリー出場車(1992年・RNN14型)
4代目パルサー(N14型)は1990年(平成2年)8月に発売された。
バブル期に開発されたためかバリエーションが豊富で、ボディタイプは3ドアハッチバック・4ドアセダン・5ドアセダンで、エンジンはガソリン5種類・ディーゼル1種類の計6種類が用意された。
中でも3ドアハッチバックに設定された「GTI-R」は、2リッターツインカムターボのSR20DET型エンジンとフルタイム4WD「ATTESA(アテーサ)」を搭載していた。
エンジン上部にインタークーラーを設置したため、ボンネットには大型のバルジと冷却ダクトが設けられた。
WRC(世界ラリー選手権)には1991年(平成3年)から参戦を開始。
コンパクトなボディと高出力エンジンの組み合わせはラリーを戦う上で有利なパッケージのはずだったが、1.5リッターがメインとなっているパルサーのエンジンルームにブルーバード用の2リッターターボエンジンを搭載したためエンジンルームのスペースに余裕がなく、冷却が十分行えずにエンジンが熱ダレするという問題が露呈。
また、当時のWRCはグループA規定の車両で行われていたが、グループA規定では外観の変更が禁止されていたため、競技で幅の広いタイアを使用するためにはあらかじめ幅の広いタイアに合わせて市販車のフェンダーを設計しておく必要があった。
しかし、パルサーGTI-Rは市販車用の195㎜のタイア幅の設計でWRCのホモロゲーション(認証)を取得してしまったため、競技でタイア幅の拡大ができずエンジンのパワーを生かしきれなかった。
同じ時期にグループA規定のツーリングカーレースで活躍したスカイラインGT-R(BNR32型)があらかじめレース用のタイア幅に合わせて市販車のフェンダーを設計していたのとは対照的である。
パルサーGTI-Rは1992年(平成4年)第2戦スウェディッシュラリーで総合3位となったものの、その後目立った活躍はなく同年撤退した。
展示車はスティグ・ブロンクビスト/ベニー・メランダー組が1992年最終戦RACラリーに出場した実車である。
パルサーGTI-R 1992年RACラリー出場車 主要諸元
ヘリテージコレクションNo.192
全長:3,975㎜
全幅:1,695㎜
全高:1,400㎜
ホイールベース:2,430㎜
トレッド(前/後):1,445mm/1,435mm
車両重量:1,150㎏以上
サスペンション(前/後):ストラット/パラリルリンク式ストラット
ブレーキ(前/後):ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
タイア:195/70R16
パルサーGTI-R 1992年RACラリー出場車 エンジン主要諸元
エンジン型式:SR20DET型(直列4気筒・DOHCターボ)
総排気量:1,998㏄
最高出力:221kW(300ps)/6,400rpm
最大トルク:392N・m(40.0kgm)/5,200rpm