日産 下請法違反でトップが会見、問題の取引手法廃止も違法性は否定

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日産自動車が下請法違反で公正取引委員会から再発防止の勧告を受けた後も一方的に減額や買いたたきを続けている問題で、2024年(令和6年)5月31日に日産自動車は調査結果を公表した。
その中で、下請け企業に減額を強いる取引手法をただちに廃止したと明らかにした。

なお、この調査は日産自身による社内調査であり、日産と下請け企業双方の話を聞いたものではないという。
そのため日産側による一方的な主張であることに留意する必要がある。

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日産 「合意があった」違法性を否定

日産自動車は2024年(令和6年)3月に、下請け企業に減額を強要したとして公正取引委員会から再発防止の勧告を受けた。
しかし、その後も少なくとも2社に対して減額の強要を続けていたことが5月10日のテレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」で報じられた。
経緯は下記リンクから。

日産自動車が下請けいじめ 下請け法に違反し部品代金を30億円減額
公正取引委員会は2024年(令和6年)3月7日、日産自動車が下請けの部品メーカーに支払う代金を一方的に減額していたことが下請け法に違反していたとして、再発防止などを求める勧告を出した。
日産自動車 下請法違反を継続

今年3月に発覚した、日産自動車の下請け法違反。

テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」の追跡取材で、現在も継続していることが2024年(令和6年)5月10日に放送された。

取材に応じた2社はばれたら切られるというリスクを背負いながらも、自動車業界で長年続いている悪い商慣習を変えるきっかけにしたいとの思いで取材に応じたという。

日産の下請法違反に政治・経済界から厳しい非難の声

日産自動車が下請法に違反する取引先への減額強要を、今年3月の公正取引委員会から再発防止の勧告を受けた後も継続していることが、先週2024年(令和6年)5月10日放送のテレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」で放送された。

それを受けて5月14日、自民党や経済界から日産を非難する声が相次いだ。

この問題で、2024年(令和6年)5月31日に日産自動車は社内調査の結果を公表した。日産のトップである内田誠社長兼CEO(以下内田社長)自らが臨むという異例の記者会見となった。

日産側弁護士である長島・大野・常松法律事務所の辺誠祐弁護士は、

報道されたような計算式と個別原低に関する記載が存在する見積書のフォーマットの利用が確認されております。

と、5月10日にテレビ東京系「ワールドビジネスサテライト」が報じた、下請け企業が価格を入力すると自動的に減額された価格が入力される見積書のフォーマットの存在を認めた。
しかし、日産は下請け企業との間で合意があったとして、特段問題はないという見解を発表した。

また、メールで下請け企業に日産の目標金額まで減額を強要したことについては、

「目標金額を下回る提案がサプライヤーさんからなされなければ取引が成立しないというような運用ではございませんでした。」

と、「現時点で法令違反と判断できる状況ではない」とした。

内田社長は、

「試作事前見積書およびメールに記載していた、誤解を招く表記については、直ちにその運用を廃止しております。

と、問題とされた見積書フォーマットや減額強要と受け取られかねないメールの運用をやめたと明かした。

また、内田社長は質疑応答での「この2件の取引は不適切だという認識か、それとも適切な取引だという認識か?」
という質問に対し、

サプライヤー様がそう(適切だと)受け止めていないということがあれば、そこは我々は正していきたい

と回答した。

日産は6月から、下請け企業が個別に相談できる専用のホットラインを新設することを表明した。
また、取引先の悩みを聞いてまわる内田社長直轄の「パートナーシップ改革推進室」を新たに設置し、取引環境の改善を進めるとした。

この会見について、以前テレビ東京の取材に応じた下請け企業は、

謝罪や返金の方針は示されませんでしたが、一方的な減額や買いたたきの仕組みがなくなったのは大きな前進です。取引が適正になり、報復されることなく今後も日産と取引していけることを望んでいます。

と述べた。

日産幹部「グレーだけど違法ではない」

テレビ東京によると、ある日産幹部はつい最近まで周囲に「グレーだけど違法ではない」と発言していたという。
そうした姿勢に対し、中小企業の価格転嫁を進めようとしている政界から「違法か違法でないかが問題ではない。グレーであること自体が問題だ。」と強い批判が出ていた。
そのため、5月10日の「ワールドビジネスサテライト」で報じられた不適切な取引手法をまず廃止したというのが実際のところだという。

また、日産が下請け企業が個別に相談できる専用のホットラインを開設することについて、ある下請け企業はホットラインに相談しても、結局は購買部門に知られて仕事を切られるのでは?と危惧する声があると報じた。

幹部が「グレーだけど違法ではない」と発言していることから、日産は幹部クラスが違法か違法でないかという以前に疑念を持たれるような行いをすることは良くないという感覚を持っておらず、社会の感覚とずれていることが分かる。

公取委、経団連、ジャーナリストのコメント

こうした日産の対応について、5月10日の「ワールドビジネスサテライト」にも出演した公正取引委員会の向井康二官房審議官は、5月31日の会見後にテレビ東京の取材に対し、

内田社長のリーダーシップのもとで、サプライヤーとの取引の適正化に取り組んでいる姿勢が見えたかなということもありまして、そういう観点からは私個人と致しましては評価できる内容ではあったのではないかと思います。

と内田社長自らが関わる形で再発防止組織を立ち上げたことを評価。

また、買いたたきに抵触する恐れがあると指摘していた原価低減率の決められた見積書のフォーマットを日産が廃止したことについては、

サプライヤーに対して誤解を与えるということだと思いますので、それをやめるという判断は下請法違反、取引適正化の観点から重要な一歩を踏み出していただいたのかなと思っております。

とコメント。
その上で、公正取引委員会として今後、日産が進める取引全体の調査結果を見極めるとした。

以前日産に対し「どういうけじめを付けるか待っている」と話していた、経団連の戸倉会長は、

法律に抵触するかしないかということよりも、まずはそういう誤解が生じないような話し合いの場を持つべきかなと思います。

とコメントした。

日産を長く取材してきた、ジャーナリストの井上久男氏は今回の問題の背景について、

日産は業績が悪いからその(適正な取引)発想が欠けて、自分のところだけが利益を出すために部品メーカーに値引きを要請したということだと思うんですね。自動車部品メーカーはやっぱり共存共栄であるべきだと思うんですね。下請けとの共存共栄をどう作るのかは、自動車メーカーが自ら成長していくために欠かせない視点の1つになってるんじゃないかと思います。

と指摘した。

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