日産自動車の創立80周年を記念したパレードが2013年12月23日に行われた際、ダットサン富士号とダットサン12型フェートンが日産グローバル本社ギャラリーのエントランス前にあるピロティに展示された。
ダットサン富士号は、このパレードを目前に控えた2013年11月27日に逝去したニスモ初代社長の難波靖治氏が日産自動車の社員時代にドライバーを務めた車両である。
日産初の国際競技参戦
1957年(昭和32年)に発売されたダットサン210型は海外への輸出を考慮して設計されており、性能を海外でアピールするためにラリーに参戦した。
1958年(昭和33年)8月20日~9月7日に開催されたオーストラリアを一周するラリー「モービルガス・トライアル」に日産は2台のダットサン210型をエントリーさせた。
赤いボディの「富士号」とピンクのボディの「桜号」である。
日産にとって初めての国際競技にもかかわらず富士号は16,000㎞を走り切って完走しただけでなく、Aクラス(排気量1,000㏄以下)でのクラス優勝を果たした。
このラリーには67台が参戦したが、総合順位でも完走した34台中25位となり、信頼性をアピールした。
インストルメントパネルには富士号のドライバーであったニスモ初代社長の難波靖治氏(1929年-2013年)と奥山一明氏、ナビゲーターのB.ウィルキンソン氏のサインが残されている。
走行可能な状態にレストア
日産自動車の「名車再生クラブ」によって2011年に走行可能な状態にレストアされた富士号。
色褪せていたカラーリングは綺麗に修復されたが、競技中に出来た右フロントフェンダーの凹みはゴール直後の雰囲気を保つために残されている。
古いクルマのレストアというと部品の調達が問題となるが、50年以上前のクルマのため日産自身によるレストアと言えども部品の入手は困難を極めた。
中でもゴム関係の部品は車種専用に作られることが多いため入手できず、ドア回りのウェザーストリップはウェットスーツの素材を使用して再生されている。
桜号も富士号同様に名車再生クラブによって走行可能な状態にレストアされ、日産の記念庫に保存されている。
ダットサン 富士号(1958年・210型)主要諸元
記念庫No.017
全長:3,860㎜
全幅:1,466㎜
全高:1,535㎜
ホイールベース:2,220㎜
トレッド(前/後):1,170㎜/1,180㎜
車両重量:925㎏
サスペンション(前/後):平行リーフリジッド/平行リーフリジッド
ブレーキ(前/後):ドラム/ドラム
タイア:5.00-15-4PR
最高速度:95km/h
エンジン主要諸元
エンジン型式:C型(直列4気筒・OHV)
総排気量:988㏄
最高出力:25kW(34ps)/4,400rpm
最大トルク:65N・m(6.6kgm)/2,400rpm