「日産・プリンス合併50周年特別展示」が、日産グローバル本社ギャラリーで2016年8月2日から2017年1月31日まで開催されている。
このイベントではプリンス車だけでなく、日産とプリンスの合併後に日産で継承されたクルマや両社の技術・文化の融合を象徴するクルマが展示される。
2016年12月1日から12月16日まで、世界初のミニバンである初代プレーリーが展示された。
世界初のミニバン「プレーリー」
日産初のFF車「チェリー」は、1978年(昭和53年)から新シリーズ「パルサー」へ移行する。
しかしこの頃、FF車の構造の複雑さや製造コスト、不具合対策などの問題が日産の社内でクローズアップされ、荻窪を拠点とする旧プリンスのFF車開発陣には逆風が吹き始めた。
彼らはFFの将来性やメリットを説いて上層部を説得し、事なきを得たという。
これと前後して荻窪では「FFならではのメリットである、フラットで低いフロアによる居住性を最大化したクルマができないか」という発想が生まれる。
背の高いボディ、低い地上高、大きなドアなどが特徴的なクルマのスケッチが1974年(昭和49年)ごろにはすでに描かれていた。
新種のクルマに対するマーケティング面での慎重な意見や技術的困難を克服し、この着想を具体化したのが、乗降に邪魔なセンターピラーを無くした背の高いボディ、両側スライドドア、コンパクトなボディでありながら8人乗りというパッケージングを持った「プレーリー」(M10型)である。
初代プレーリーが発売された1982年(昭和57年)8月の時点で、同種のコンセプトの製品は世界のどこにもなく、海外メーカーのミニバンはプレーリーの1~2年後に発売されていることから、プレーリーは世界初のミニバンとなったのである。
プレーリー JW-G(1984年・PM10型)
1980年代初めにはミニバンというカテゴリーはなく、多人数が乗れるクルマは「バネット」や「キャラバン」のようなワンボックスがあるだけだった。
初代プレーリーは未来型のマルチユースセダンとして、時代を先取りした世界初のミニバン。
FFのメリットを生かした低く平らなフロア、センターピラーのない大きな開口部のボディと両側スライドドアの採用で、従来の乗用車では実現できなかった使い勝手を実現した。
JW-Gは8人乗りと5人乗りのセダンの他、3人乗り+400㎏積と6人乗り+200㎏積のエステートもラインナップされた。
エンジンは1.5リッターのE15Sと1.8リッターのCA18Sの2種類だった。
ヘリテージコレクションNo.159
全長:4,090㎜
全幅:1,655㎜
全高:1,600㎜
ホイールベース:2,510㎜
トレッド(前/後):1,430㎜/1,390㎜
車両重量:1,030㎏
サスペンション(前/後):ストラット/トレーリングアーム
ブレーキ(前/後):ベンチレーテッドディスク/ドラム
タイア:165-SR13
エンジン主要諸元
エンジン型式:CA18S(直列4気筒・OHC)
総排気量:1,809㏄
最高出力:74kW(100ps)/5,600rpm
最大トルク:149N・m(15.2kgm)/2,800rpm